伽藍を捨ててバザールへ
橘玲の本を読んでいたら、目指すところは間違っていないのではないかと言う感覚になって、多少は、勇気が出た。
まぁ、目指すところに辿り着くのかどうかが大問題ではあるのだが。
何でもそうだが、売れ筋商品というのはある。
どんなにニッチなジャンルの商品、例えば、日本のアートマーケットだって、売れ筋商品というのはある。
日本の場合はアートそのものが、商品としてはニッチだから、売れ筋商品とみなされない作品は、マーケットに並ぶ事さえ無い。
商品の幅を多少は持たせようと、売れ筋以外の商品を並べようとしても、そのポジションは既に繋がっている横の繋がりの中で決まっていく。
だから、作家を名乗る人々は飲み会が忙しい。
飲み会に出向かない付き合いの悪い作家や、地方の作家などは、情報弱者・人脈弱者になって、椅子取りゲームに参加する事も難しい。
そもそも、椅子取りゲームはそれ自体が伽藍のようなものだから、そのコミュニティの中の売れ筋商品、ボリュームゾーンに合わせていく以外に生き残る術が無い。日本にどれだけマーケットが存在するのかは知らないが、そのボリュームゾーンに収まって、それで食えていけてる作家がいるのなら、羨ましい以外に言葉が無いが、わたしのようなモノは、どうやら既存の伽藍での修行以上に性に合わないモノが無いようで・・・。
結局、自分で椅子を並べて、自分で座る。
BandH Galleryの作家は、みんな自分で、椅子は持参。だから、椅子が無くなることはない。
しかし、伽藍でも無いから、修行したところで登り詰める先も無い。
どちらかと言うと戦艦だ。船員は各自、自分の仕事をプロフェッショナルにこなす必要がある。
でなければ楽しく航海できないか、飢え死にするか、大海原で故障するか、遭難だ。
戦艦とは言え、戦うべき相手も見えてはいない。
目指すべき陸も見えてはいない。
とにかく、バザールへ出たいという意思だけで、海に浮いていた箱に入り込んできた人間が集まった状態だ。
この箱が、タダの木箱なのか、放置されたコンテナなのか、船なのか、戦艦なのか・・・・今、みんなで調査中といったところか。
自分の仕事をプロフェッショナルに突き詰めるという事は、橘玲の言葉を借りれば、「好き」を仕事にすると言うことだろうか。
まぁアーティストなどと言うのは、好きでなければ、毎日が夏休みの宿題を全くやらずに迎えた8月31日のようなものだから、誰もやらないだろうが。正しくは「ホントに好き」を目指すというところだろうか。
自分が好きだと思うものは、必ず既にそれが好きだという人間が存在する。
自分が好きなものが、世の中に自分だけなどと言う事は無い。もしあったとしたら、それだけ特別な存在は、アーティストとして悶々とするよりも前に、何かで頭角が出ているだろう。
「ホントに好き」の「ホント」が厄介なのである。
だいたいの人間は、モノを生み出す時に客観視する事が難しい。
努力点などが入って、必要以上に自分の作品の評価を上げ、反比例するように作品の質が下がっていく事がある。
企業努力と言うのは凄いもので、安く商品を造ろうと思えば、海外に工場を造ったり、栗の皮むきや食玩のペイントを中国人がやったりしている。伽藍を出てバザールに行くと言う事は、マーケットとしてもアート以外の全ての商品が比較対象となる。
自分の作品に付けている値段で、他のどんなものが購入できるのか、他のどんなサービスが受けられるのかを考えなければならない。
その客観性さえ失ってしまっては、それは1人新興宗教とでも言えばいいだろうか・・・。
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